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東京地方裁判所 昭和39年(レ)452号 判決 1965年10月14日

控訴人 遠藤ウメ

右訴訟代理人弁護士 萩原剛

被控訴人 樋口慶作

右訴訟代理人弁護士 大野幸一

主文

本件控訴を却下する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

本件控訴の趣旨は、「原判決を取消す。被控訴人の請求を棄却する。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求める、というのであり、双方訴訟代理人は、「控訴人に送達された原判決正本が記録添付の判決原本と相違する点は、その添付図面がなかった点である。」と述べた。

まず本件控訴の適否について調べるに、昭和三九年八月三一日に言渡された原審判決の正本が同年九月四日控訴人(原審被告)遠藤ウメに送達されたことならびに右控訴人が同年九月二八日に本件控訴を提起したことは記録上明らかである。そして≪証拠省略≫を総合すれば、昭和三九年九月四日に控訴人遠藤に送達された原審判決正本には、本件記録添付の原審判決原本のうちの最後の一葉である図面が脱落しており、右送達後その脱落に気付いた原審中野簡易裁判所書記官は控訴人遠藤に右正本を持参するよう葉書で通知し、控訴人遠藤に持参させて本件図面を添付のうえ普通郵便で控訴人遠藤宛送付し、右郵便は同年九月一六日控訴人遠藤に到達したことが認められる。

そこで、前記判決の送達の効力について考察する。

記録に編綴された原審判決原本を読んでみると、その主文には「被告は原告に別紙目録記載(イ)、(ロ)の各建物を取り毀ち、同目録記載(ハ)の建物を截取して、同目録記載の土地を明渡せ。」との記載がある。右記載中の「別紙目録記載(イ)、(ロ)の各建物」「同目録記載(ハ)の建物」「同目録記載の土地」については、右判決原本に添付されている物件目録にその具体的な記載があり、原判決の趣旨は右地上に存する右各建物及び建物部分を取り毀ちもしくは截取して土地を明渡すべきことを命ずるものであることが知られるが、なお、右物件目録には「別紙図面(イ)の部分」「別紙図面(ロ)表示」等の各記載がなされ、図面が引用されている。そして本件図面は、物件目録の右記載と対照すると、物件目録記載の(イ)(ロ)(ハ)の各建物ないし建物部分が、同目録記載の土地上のいかなる場所に存在するかを指示することによって物件目録記載の各物件の特定をより明確にする為に添付されているものと認められる。

ところで、前記のような原審判決原本の主文の記載と別紙物件目録の記載とを総合すると原審判決原本の主文の意味は十分に捕促することができ、右物件目録の引用する本件図面がなくてもその意味内容が不明なものとは認めることができない。

もっとも本件図面の判決書への添付は判決書の表現を補充してその意味をより明瞭にするものであり、原判決も右図面の添付さるべきことを予定していたことが認められるが、本件原審判決正本への図面の添付の遺忘は、前記の如く原審における裁判の内容を不明にするものといえない以上、未だ判決書の表現上の過誤に属する事柄であって民事訴訟法第一九四条の更正決定によって是正されるを以って足るものと考える。

そして判決正本に存する右の程度の過誤によって、これによる送達の効力を否定することはできないと考えられるから、原審判決は控訴人に対し昭和三九年九月四日有効に送達されたものといわなければならない。してみると、控訴人遠藤の本件控訴は、原審判決正本の送達をうけた日の翌日である昭和三九年九月五日から起算して二週間目の日である同年九月一八日迄に提起されねばならないところ、本件控訴は同年九月二八日になされたのであるから、右控訴は控訴期間経過後になされたもので不適法なものといわなければならない。このことは原審書記官が右送達後控訴人遠藤に判決正本を持参させて本件図面を添付のうえ再び普通郵便で控訴人遠藤宛送付した事実があるからといって差異のあるものではない。(なお、控訴代理人提出の口頭弁論再開申立書の記載によれば、控訴人はこの点をとらえてその責に帰すべからざる事由により控訴期間を遵守することができなかったとして控訴の追完を主張する趣旨が窺われるが、上述の事実関係によれば、本件控訴はその事由のやんだ時からさらに一週間を経過した後になされたものであると認められるから、これによって控訴を適法ならしめることはできない。)

よって、本件控訴は不適法としてこれを却下し、訴訟費用につき民事訴訟法第九五条、第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 安岡満彦 裁判官 輪湖公寛 竹澤一格)

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